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「秩父 山小屋 珈琲店」

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※某団体向けに2015年に書いた文章です。

 子供の頃から埼玉の秩父へ行くのが好きだった。本格的に登山するわけでもなく、ただただ、秩父という地域の雰囲気が好きだった。西武線の終点、西武秩父駅で降り、秩父鉄道の御花畑駅に向かう途中の商店街を見て回る。昔はその一角に鉱石を扱う店があり、秩父を訪れるたびに店頭に置かれたアメジストドームに触れるのが習慣になっていた。商品の石に触ってニヤニヤする小学生。今から思うと、とても不気味である。
 社会人になり、秩父へ行く機会は減ったが、それでも年に数回は足を運んでいる。何か特別なつながりがあるわけではないのだが、私にとって秩父は心のふるさとなのかもしれない。そんな私が秩父へ行くと必ずといってよいほど立ち寄る珈琲店がある。
 その珈琲店は御花畑駅のすぐそばにあるのだが、まるで山小屋のような佇まいで、店の前に立つだけで、気持ちが癒される。店内に入ると、大きな木のテーブル、アンティークな時計、レコードや詩集などが視界に入る。「いかにも」な雰囲気である。この店は、食べ物の持込が自由である。なぜならば、メニューに珈琲しかないから。注文を受けてからゆっくりと時間をかけて淹れられる珈琲。普段、時間に追われる仕事をしているせいか、私にはこの時間がとてもいとおしく思える。薄暗い店内だが、本などを読もうとすると、店主はランプを用意してくれる。心遣いが温かい。しかも、二杯目以降は割引価格で飲めるので、ついつい長居してしまう。
 山の中にあるわけでもないのに、「秩父 山小屋 珈琲店」で検索すれば最初に出てくる珈琲店。この地で四十年以上も営業しているという。秩父方面に行くことがあれば、一度立ち寄ってみてはいかがだろう。あなたの心の記憶にも、きっとお気に入りの場所として登録されることだろう。ちなみに店名は「秩父山小屋珈琲店」ではない。

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