昨日の僕を

Kinounobokuwo
「昨日の僕を」

世の中に八百屋とか風呂屋が存在する様に、
はにかみ屋や照れ屋なんていう商売が
あればいなと考えた。
その店の中には、少年少女時代の心を
忘れずに温めている純な人達がいて、
日々の忙しい生活の中に「照れ」や
「はにかみ」の方法を置いてきて
しまった訪問者に、それを自ら
演じてみせる事により思い出させる。
幸せを与える。素直な自分に戻してあげる。
そしてお金は取りません。
(1992年) 

詩集『バーミキュライト』より。
※背景の原画は中学時代、美術の授業で制作したもの。

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キスしたい

Vermiculitel_3千登世橋の上でキスしたい。
競馬中継を背景にキスしたい。
善福寺池のボートでキスしたい。
零時七分にキスしたい。
階段の踊り場でキスしたい。
大雨洪水注意報発令中にキスしたい。
十三号地でキスしたい。
うなじを見てからキスしたい。
前の彼の悪口を聞かされてからキスしたい。
鼻さえつけるキスしたい。
次の車が習志野ナンバーだったらキスしたい。
あなただからこそ、
キスしたい。

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わかさ

「はじける」という表現を使うのに、
針でつついても画鋲をさしても、
なぜか割れません。
それは特殊加工を施した、
しなやかな風船。
世の中の誰もが
手に入れることのできる
ありふれた物体なのに、
いつか手放す日がきます。
それはまるで、
小・中学校の
給食のようです。

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サンドウィッチの作り方(一例)

「なにやってんだろ」という絶望的冷笑と、
「懸命に頑張るぞ」という健気な向上心と、
「僕なら大丈夫」という根拠不明な自信と、
「人生甘くはないんだ」という救いのと、
「ずっと応援してる」という誠実な激励と、
「もう諦めようよ」という偽善的いたわり。

あなたの今までを箇条書きにしてみましょう。
しょっぱいけれど味のある、「人生サンド」のできあがり。

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諸般の事情あるいは一つのキッカケで、キズナが崩壊しつつある恋人たちがいます。悲しい話だけれど、その多くは、どちらか一方の側が勇気を出してヤサシイコトバとかイイワケでないスナオナコトバをかけてあげれば済むことなのです。
 キズナは形状記憶合金です。曲がっても曲がってもお湯をかければ戻る。お湯が熱すぎると元に戻らないし、曲げすぎると切れてしまう。

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六〇〇円

証明写真を待ちながら思う。
   明日の面接で何を聞かれるんだろう。
証明写真を待ちながら思う。
   トビタキュウという駅名は
   売れないコメディアンんのようだな。
証明写真を待ちながら思う。
   小悪魔という言葉が
   辞書に載っていないのは
   女性の陰謀か。
証明写真を待ちなが

証明写真が機械から出てきた。
証明写真を待ちながら、
「証明写真を待ちながら」という日本語は
詩になるな、と思った。 

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青色小唄

「心」を「受」けると、
「愛」になる。
漢字を知らないマセガキが、
漢字を見ながら言い出した。

心を受けても、
愛にはならない。
漢字テストじゃ
バッテンさ。
僕は冷たく言い返す。

そもそもホントの愛なんて、
この世にひとつもないもんね。
漢字を知らないマセガキが、
マセた言葉を繰り返す。

確かに確かにこの世には、
行方不安な愛ばかり。
僕は半分同意して、
マセたガキとの会話を終えた。

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不飽和感情という名の

夏が冷えて秋になる頃、
木々の栗々の落下音と共に、
僕の大好きな人の誕生日が近づく。
夏休みの宿題をしないでそのことばかりを、
昼夜ぐるぐると考えた。
リヤドフとネッケの楽譜を手渡した四年前。猫の絵の絵本をあげた昨年。
今年は詩を作り、贈ることにした。
満たされない故の苦しみと切なさを、
彼女への片恋の感情を、言葉にした。
僕の感情が、
今年こそあの人の許に届いてくれると、
いい。

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ひからびたミカン

朝、目を覚ましたら、
目の前にひからびたミカンがあった。
ひからびたミカンは、
ふとんの中でちぢこまっている僕の
目と鼻の先に、
実に堂々と存在していた。
ひからびたミカンは、
ひからびていたけれど、
なぜか楽しそうで、
僕よりも幸せそうで、
少し悔しかった。
僕はひからびたミカンが憎らしくなったので、ストーブの上に乗せてやった。
はじけて、飛んだ。
よけい悲しくなった。

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ほくほくの日

今日は何をしようか
部屋の掃除をしよう
さぼてんに水をあげよう
自転車を洗おう
蒸れたふとんを
太陽に干そう
近所の森に
でかけて行って
6Bの鉛筆で雲を描こう
裏山のふもとで
たくさんたくさん
酸素を吸おう
財布が軽くても
好きな子と
デートできなくても
僕にとっては
ほくほくの日曜日

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